福岡県の八女郡商工会女性部

2001年9月28

中部経済新聞掲載



京都美山町に喧騒を忘れさせる
かやぶき民宿 旬季庵

 京都府の北端にある美山町は自然豊かな山村で、由良川の清流に沿って民家があり、農村の原風景にであったような懐かしさでいっぱいになるところだ。その日はあいにくの雨だったが、空気が澄んでいてときおりかやぶきの民家があらわれて昔に戻った雰囲気が漂う。かやぶき民宿 旬季庵は道路を少し離れた山手のところにある。経営者の広瀬将憲氏(京都府北桑田郡美山町大字三埜小字東田4−2 TEL・FAX0771−75−0353http://www.nande.com/syunkian/)が長年の念願だった民宿を平成11年にオープンしたものだ。

かやぶき民宿 旬季庵
秋の季節料理

 広瀬氏は10代の頃から大阪の尼崎市で、関西では有名な高級料理店で28年間料理人としての人生を過ごしてきた。その店では和洋折衷料理のシッポク料理(長崎発のチャンポン料理)などをやってきた。10年ほど前より50歳を過ぎたら静かなところで山菜料理など自分の腕を生かす仕事がしたいとそんな思いを募らせてきた。休みを利用して各地を旅行して回った。飛騨高山なども見て1年がかりで真剣に民宿の研究をした。そして現在のかやぶきの建物に出会った。旬季庵の建物は築300年の元庄屋(前村長)さんの住んでいた民家で趣きのある佇まいである。

 日頃の喧騒を忘れさせる空間がそこにはあった。大きなススキや野の花がかやぶきの家を囲む様におおい茂っている。石畳を歩いていくと玄関がある。そこには大きな太鼓があってお客様はこの太鼓を叩くようになっている。何となく楽しくなって思わず一つ二つ叩いてみた。奥から出てきて女将さんが迎えてくださった。にくい演出がここにある。少し中に入っていくと大きなちょうちんと李朝の家具がうまくマッチしている。もっと奥に入っていくとほのかなあかりの中に大きな囲炉裏がある。奥様手作りのこたつ掛けが暖かく足を包んでくれた。急に秋の訪れがきたかのようにその日は寒かったので、お話を伺いながら膝を温めていた。

いろりと広瀬夫妻
かやぶきの里

 自慢の料理は地野菜や地鶏の創作料理である。別棟になっているかやぶき屋根のお風呂は美山の大自然にかこまれた風情の中でゆったりと24時間いつでも入れる。このかやぶきの家屋は美山町に点在しているが、特に「かやぶきの里」として平成5年12月に国の重要伝統的建造物群の保存地区に選定された地区があり、その地区には50戸の家屋が東西600m南北300mの範囲に点在している。かやぶきの建物は入母屋造りで、この集落の約半数が段丘状の屋敷地三方を囲むように点在しており、山や清らかな由良川とうまく調和していて、農村の原風景をそのままに残している。美山町の中心を流れる由良川は3月にはあまご釣り6月にはあゆつりが解禁になる絶好のつりの場所でもある。

 まだまだこの美山町は俗化していない静けさが残る。訪れる人々のこころをなぐさめてくれるような安堵感もある。旬季庵も広瀬氏の長年の思いがこもった宿で落ち着ける空間をつくっているが、若い人が思い付きで民宿を経営するのと違い、長年じっくりと店づくりの構想を練って作り上げた宿である。ふすまの絵や火鉢、囲炉裏そして一つづつの調度品に選んできた思いのたけがこもっている。いま、不況のなかであえいでいる経営者は多い。お店や事業に自分の信念をもって経営している経営者がどれほどいるのだろうか。時代のながれが早いのでそんなのんきなことは言っていられないという人もいるかも知れない。しかし、どんな時代にあっても自分の経営哲学をもった事業を営んでいる人はそう簡単に崩れるものではない。

調度品いろりの部屋
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『うつりゆく商業環境と躍進するまちと店』
広野 嘉代子